江藤有希
ヴァイオリニスト、作・編曲家

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リオ篇 1月24日(土)

2004.1.24 更新

今日は大物怪物ギタリスト・ヤマンドゥの誕生日パーティ。「いいミュージシャンが沢山集まるから来なさい」とホジェーリオにすすめられ、コパカバーナから
遠く離れたヘクレイオという土地へ。ヘクレイオに行くにはまずバスでバーハ・ショッピングまで行き、その後はタクシーで向かわなければならない。
悲劇は最初のバスで起こったのでした。宿近くのバス停から乗り、すぐに料金を支払い右手にバッグを持ち、左手にお釣りを受け取ったその瞬間、猛スピードで走っていたバスが急ブレーキで停まり、私は背中からものすごい勢いで床に叩きつけられたのです。
背中には楽器をしょっていました。左腕は痛み、ショックで頭の中は真っ白になり起き上がれない。すぐさま近くのバス停から乗って来た青年が小銭を次々と拾
い集め、私の体を優しく抱き起こしてくれた。運転手も車掌も心配はしてくれたけど、心配するならあんなスピード出さないで~!
バーハ・ショッピングに着いてバスを降りる時、車掌が親指をたてつつ「大丈夫か?」と聞いてきたので泣きそうになりながら親指をたてて「大丈夫」と答えましたが、大丈夫ではなかったのです。タクシーに乗り換えて楽器のケースを開けてみると、魂柱(表板と裏板の間に立ち響きをつくる木の柱)が表板をつきさし、楽器はまっぷたつに割れていたのでした。もはや修理不可能。

やっとの思いでパーティ会場に着き事情をホジェーリオに話すと、フランス人ヴァイオリニスト・ニコラが「僕のを使って」と優しい笑顔で楽器を手渡してくれ
た。すでに行われていたホーダ・ジ・ショーロの輪に入り、数曲ショーロを演奏してあとはニコラにバトンタッチ。聞いていたとおり有名人がわんさかいて「ト
リオ・マデイラ・ブラジル」のゼー・パウロ・ベッケル(ギター)、バンドリンのアミウトン・ジ・オランダ、ルシアーナ・ハベーロ(カヴァキーニョ)、大物
サンバ歌手のバックを多くつとめるジルセウ・レイチ(フルート)、「ノ・エン・ピンゴ・ダグア」のマリオ・セーヴィ(クラリネット)などなど。
でも一度返した楽器を「また貸して」とは言えず、なんだか手持ちぶさた。そしてニコラはとても親切に「リオにある楽器屋を知っているから明日電話して」と言ってくれました。
パーティの後は車でラパの『カリオカ・ダ・ジェンマ』へ移動。タニア・マシャードという女性サンバ歌手のライブでホジェーリオやセウシーニョたちがバック
をつとめるのだ。楽器があれば弾く予定だったのに…セウシーニョに「楽器を持っているときはタクシーじゃなきゃ駄目だ」とおしかりを受ける。ごもっともで。傷心のまま3時頃帰宅。